日本の保育施設は「認可保育園」と「認可外保育園」に大別され、それぞれの特徴や運営方法には違いがあります。今回は、これらの基本的な違いを詳しく見ていき、さらに歴史の長い認可保育園と認可外保育園(企業主導型や事業内保育施設など)の柔軟性について掘り下げていきます。
認可保育園と認可外保育園の基本的な違い
認可保育園
- 運営主体:自治体(市区町村)や認可法人、NPO法人などが運営。
- 基準:国や自治体が定めた厳格な基準を満たす必要があります。施設の広さや職員数、保育内容については、法的に詳細な規定があり、定期的に監査を受けます。
- 保育士の人数:認可保育園では、保育士の配置基準が厳格に定められており、例えば、3歳未満児に対しては1人の保育士に対して3人まで、3歳以上児には1人の保育士に対して6人までの人数制限があります。保育士の資格を持っていない職員を雇うことはできません。
- 監査:国や自治体による監査が定期的に行われ、基準を満たしているかどうかがチェックされます。
- 保育料:所得に応じた段階的な保育料が設定され、助成金や無償化の対象となります。
認可保育園の特徴は、厳格な基準を満たすことに加え、長年の運営経験を持つことで、運営ノウハウが蓄積され、保育内容に対して柔軟な対応が可能です。例えば、保育の質を保ちながら、保護者の個別のニーズや子ども一人ひとりの特性に応じた保育が提供されることがあげられます。こうした施設では、保護者とのコミュニケーションがしっかりと取られ、柔軟な保育が行われやすいです。また、基本的にはその地域に住む子供が通うことになるので、保護者のコミュニティが成立しやすく、地域保育の観点からもメリットが多いと言えます。
認可外保育園
- 運営主体:民間企業や個人が運営。
- 基準:認可保育園に比べると、運営基準は比較的緩やかです。施設ごとに運営方法や基準が異なり、自治体によっては最低限の基準を設けている場合もありますが、認可保育園ほど厳格ではありません。
- 保育士の人数:保育士の配置基準が比較的緩く、1人の保育士が担当する子どもが多くなることがあります。また、保育士資格を持たない職員を雇うことも可能です。
- 監査:認可外保育園も、自治体による監査を受けますが、認可保育園ほどの厳格さはなく、施設ごとに規定が異なります。
- 保育料:保育料は施設ごとに自由に設定され、認可保育園よりも高額になりがちです。無償化や助成金の対象にはなりますが、下記のように条件を満たす必要があります。
【認可外保育園の保育料無償化の対象要件】
- 施設の確認:施設が都道府県などに届出を行い、国が定める基準を満たしていること。
- 保育の必要性認定:保護者が市区町村から「保育の必要性認定」を受けていること。
- 対象児童:住民税非課税世帯の0歳から2歳の児童、または3歳から5歳の児童。
無償化の対象となる保育料
- 3歳から5歳児:月額37,000円まで
- 0歳から2歳児(住民税非課税世帯):月額42,000円まで
給付の手続きと注意点
- 事前申請:無償化の対象となるためには、事前に市区町村で「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。
- 償還払い:無償化の給付は償還払いとなるため、保護者が一旦保育料を支払い、その後、領収書等の書類を提出することで、指定された口座に振り込まれます。
- 対象外経費:給食費や教材費、行事費、通園送迎費など、実費として徴収される費用は無償化の対象外となります。
経過措置と今後の対応
現在、認可外保育施設が国の定める基準を満たしていない場合でも、経過措置として無償化の対象となる期間が設けられています。しかし、令和6年10月以降は、基準を満たしていない施設は無償化の対象外となるため、施設の基準適合状況を確認することが重要です。
認可外保育園の種類と特徴
認可外保育園には、企業主導型保育施設や事業内保育所など、特定の目的やニーズに応じて設置される施設が増えてきています。これらの保育施設は、企業や団体が自社の従業員向けに設置することが多く、独自の基準で運営されています。

企業主導型保育施設
- 特徴:企業が自社の従業員向けに設置する保育施設で、企業主導型保育施設は主に従業員の子どもを受け入れることを目的としています。企業が運営しているため、福利厚生の一環として提供されることが多いです。保育の質は企業によって異なりますが、柔軟な保育時間や、企業の方針に基づいた保育が特徴です。
- 対象者:主に自社の従業員の子どもが対象ですが、企業によっては外部の子どもも受け入れます。
- 利点:企業の所在地に近いため、通勤や勤務時間に合わせた柔軟な保育時間設定が可能です。企業が補助金を提供することが多く、保育費用が抑えられることがあります。
- 課題:施設数が限られており、特定の企業に所属していないと利用できない場合があります。
事業内保育施設
- 特徴:企業内保育所とも呼ばれ、企業が自社内に設置する保育所です。従業員の育児支援を目的としているため、働く親にとって非常に便利です。企業によって運営されるため、他の保育施設とは異なり、勤務時間や条件に合わせた柔軟な保育が可能です。
- 利点:勤務先が近いため、仕事と育児の両立がしやすく、急な休みや変更にも対応しやすいことが多いです。また、企業の福利厚生として保育料が補助される場合もあります。
- 課題:施設数が少なく、企業に勤めていることが条件となるため、すべての家庭が利用できるわけではありません。
認可外保育園の柔軟性
認可外保育園は、施設ごとに異なる運営基準で運営されるため、柔軟な保育時間の対応ができる一方で、施設ごとの質に差が生じることもあります。特に、企業主導型保育施設や事業内保育所では、保育時間の柔軟性や保護者のニーズに合わせた対応が可能で、働く親にとっては非常に便利です。ただし、運営の自由度が高いため、保育の質や施設環境にばらつきがある点には注意が必要です。また、保育時間に関しては柔軟性がありますが、保育の内容に関しては施設によって大きくばらつきがあり、保育内容の柔軟性に欠ける認可外保育園も一部存在するのも事実です。(37.5℃の壁問題など)
認可保育園と認可外保育園の柔軟性の違い
認可保育園は、基準が厳格であるため、保育士の配置や施設の広さに関して一定のルールに従わなければなりません。しかし、歴史が長く、運営ノウハウを持つ施設では、柔軟な対応が可能です。保護者のニーズに応じた個別対応や、子ども一人ひとりの特性に合わせた保育が行われることがあります。
一方で、認可外保育園は、特に新しい施設や企業主導型の保育施設では、柔軟な保育時間が提供される一方で、基準が不明確な場合もあり、施設ごとで保育内容に大きなばらつきがあります。
まとめ
認可保育園と認可外保育園には、運営基準や保育士の配置、保育内容において大きな違いがあります。認可保育園は、厳格な基準を守りながらも、長年の運営ノウハウを活かして柔軟に対応できる点が特徴です。認可外保育園は、施設ごとに異なる基準で運営されており、柔軟な保育時間の対応が可能な一方で、施設の保育内容の質にばらつきが生じることもあります。
保育園選びにおいては、運営基準や保育内容だけでなく、保護者とのコミュニケーションや柔軟な対応の重要性を考慮に入れ、最適な保育環境を選ぶことが大切です。
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