日本の「給料が上がらない」という話は、ニュースなどでもよく耳にします。しかし実際にどのくらい上がっていないのか、そして世界と比べてどの位置にいるのかはあまり深く語られないことも多いでしょう。今回は「実質賃金」という視点から、日本の現状と先進国との比較をわかりやすく整理します。
実質賃金とは?
まず「実質賃金」とは何かを押さえておきましょう。
簡単にいえば 物価の変動を考慮したお給料の価値 のことです。
- 名目賃金:お給料そのままの額(例えば30万円)
- 実質賃金:物価の変動(インフレなど)を反映させた「本当の購買力」
たとえば、
- 給料が30万円のままでも、
- 物価が1年で10%上がれば、
- 実質的には生活が苦しくなります。
だから「名目」だけでなく「実質」で暮らしの豊かさを測る必要があるわけです。
日本の実質賃金の推移
日本の実質賃金は、バブル崩壊後の1990年代以降、ほぼ横ばい〜微減にとどまっています。
OECDの統計では、1990年から2023年の約30年間で、実質賃金の累積成長率はたった +6%程度 とされています。
さらに1997年から2013年にかけては 約13%の下落 という厳しい時期もありました。
直近でも、2025年4月の毎月勤労統計によると、
- 名目賃金:+2.3%
- 物価上昇:+4.1%
- 実質賃金:−1.8%(4か月連続の減少)
と、物価の伸びに給料が追いつかない状況が続いています。
海外の実質賃金推移と比較
では他の先進国はどうなのでしょうか?
OECDやG7のデータをまとめると次のようになります。
国名 | 1990〜2023年 実質賃金累積成長 |
---|---|
日本 | +6% |
アメリカ | +48〜50% |
韓国 | +90%前後 |
OECD平均 | +30%程度 |
アメリカや韓国、欧州の多くの国は、30年かけて実質的に数十パーセント以上豊かになっています。これに比べると日本の6%という数字は非常に低い水準です。
また、直近(2019〜2023年)だけを見ても
- アメリカ:+5.2%
- カナダ:+3.6%
- OECD平均:+3.4%
など、賃上げに加えインフレにも対応できている国が多いのに対し、日本は再びマイナス圏に沈んでいます。
なぜ日本だけ伸びないのか?
要因としては、以下のような構造的問題が指摘されています。
- 終身雇用・年功序列で賃金が硬直化しやすい
- 非正規雇用の比率が高まり平均賃金が下がる
- 企業が内部留保を積む一方で賃金への還元が弱い
- 労働生産性の伸びもOECD平均を下回る
日本では「賃金が上がりにくい仕組み」と「物価が上がりにくい(デフレ基調)」が長く続きましたが、近年は物価だけが急に上昇して賃金が置き去りになるという最悪のパターンに陥っているともいえます。
日本の賃上げについての詳細はこちらから

まとめ:実質賃金は生活の豊かさの指標
- 給料の数字(名目賃金)が増えても
- 物価がそれ以上に上がれば実質賃金は下がる
- 実質賃金を見ないと「本当に豊かになっているのか」は判断できない
というのが今回の一番のポイントです。
日本は国際比較の中でこの実質賃金の伸びが極めて低く、私たちの生活水準に直結する深刻な課題を突きつけています。
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